2005年02月08日

プロモーションとしてのHarvard Business Review

HBR(Harvard Business Review)の記事を読むとき、私がけっこう楽しみにしているのが著者紹介欄。
大学の先生あり、コンサルタントあり、あるいは企業の幹部ありとさまざまで、特に著者の多くが大学の講師であり、研究者であることが目を惹く。日本でも野中郁次郎氏や竹内弘高氏など、ビジネスパースンにも広く読まれる研究者が存在するが、やはりアメリカは規模が違う。ビジネススクールなどという、金儲けの秘訣を教える大学があちこちにあるくらいだから、そこで教える研究者もまたビジネスの主体であるのは自然なこと。その是非はともかく、研究者もまたビジネス世界のひとつであるのは間違いない。
となれば、自らの研究成果をできるだけ広く知らしめ、評価を受けてキャリアアップや収入のアップを目指すのは当然。HBRに掲載される記事もまた、近々発売される自著のイントロダクションであることも多い(そして、その多くはHBS Pressからの発売なので、ハーバードにとってもビジネスになるわけだ)。

先日紹介した記事「Deep Smarts」の著者による、同タイトルの書籍が洋書店で平積みになっている。真っ赤な装幀なので目立つことこの上ないが、少し集めのハードカバーだけあって少々値段も高い(たしか、5,000円内外したと思う、Amazon.co.jpでも3,714円だ)。先日Amazonを覗いたらお勧めに登場していたので、そこそこ売れているのかもしれない。
「Deep Smarts」の記事が雑誌に掲載されたのが2004年9月なのだが、本が出たのは今年に入ってから。数ヶ月間が空いてしまったことになる。著者が原稿の仕上げに手間取ったのか、あるいは最終の確認に時間をかけたのかは不明だが、HBRの記事掲載をプロモーションと考えるとちょっとタイミングがまずかったかな、と思える。HBR自体も、号によって特集があり関連する内容をまとめているので、なかなか思うようなタイミングで掲載するのは難しいのかもしれない。

さて、先週土曜日にAmazonに注文した本が届いた。
タイトルは「Best Face Forward」。これぞHBRでのプロモーションが素晴らしいタイミングで決まった例といえるだろう。先日紹介したとおり、記事は2004年12月号に載ったもので、私は出張先の書店で12月下旬に雑誌を購入しその日に読んだ。先日改めて著者紹介欄を読み返すと、やはり同タイトルの本が近日発売とあり、検索してみると1月に発売され24時間以内の発送が可能という。さっそく手配し入手した次第。
脚注を除いて228ページなので、おそらく読み終えるのは1〜2週間後の予定。エントリのネタになるかどうかは読んでからのお楽しみだ。

雑誌の記事は販売されてすぐに読まれるものだろうから、月刊誌ならば鮮度は1ヶ月もない。HBRというのは比較的ストックされてあとからも読まれる性格が強そうなのだが、それでも新鮮なのは数ヶ月だろう。
この観点からも、12月号に掲載して1月の本の発売というタイミングはかなりうまくいった例といえるのではないだろうか。少なくとも、私の場合はHBRの記事を読んでいなければ、この本に出会う可能性は極めて低かったといえる。タイトルだって、ばっと見て内容を推し量れるものではない(もちろん、「Why Companies Must Improve Their Service Interfaces with Customers」というサブタイトルがついているが)。Amazonのお勧めにでも採り上げられなければ、まず知らずに終わった可能性が高い。

もともと、私は仕事で抱えているいくつかの課題の中に顧客インターフェイスをどう設計し運営するか、というものが含まれていたため、HBRの雑誌を買った際にもサマリーの中から最初に目をつけて読んだ記事がこれだった。
プロモーションとは、適切な商品に関する適切なメッセージを、適切な相手にタイミング良く伝えるものであって初めて効果を発揮する。今回の「Best Face Forward」は、私という潜在顧客に対してはこれらがうまい具合に合致した事例だ。しかも売られているのはたったの3,000円弱の書籍なのだから、買うしかあるまい。

職場である上長が「日経ビジネスは読む気がしないけど、HBRは参考になるね」と話していた。私は日経ビジネスを読まないので批判はできないのだが、関心あるテーマについては、その背景や分析も含めた情報を求める私にとっては、短い雑誌記事は物足りないことが多い。
その意味で、記事を全体の紹介文と考え、書籍のプロモーション媒体として機能させる手法は、私にとって非常にありがたいもの。HBRを英文で読むメリットのひとつを見つけた思いだ。

Posted by dmate at 2005年02月08日 22:39 | TrackBack
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