2005年02月01日

顧客インターフェイスの設計と統合

HBR(Harvard Business Review)の記事より、2004年12月号掲載の「Best Face Forward」を紹介する。著者はMarketspaceというコンサルティング会社のJeffery F.Rayport氏とBernard J.Jaworski氏。
多くの企業が共通してもっている顧客とのインターフェイス、コールセンターやWEBサイト、あるいは店頭などのサービスオペレーションが、しっかりと統合されているケースは少なく、顧客サービスによる差別化のためには、こうした顧客インターフェイスのリエンジニアリングが必要であるとする。

顧客インターフェイスの重要性が高まっている理由として著者は4つの要因を挙げている。
商品やサービスによる差別化が長期間維持できなくなっていること、顧客との長期間の関係構築が都度取引における価格などよりも重視されていること、顧客インターフェイスに従事する労働力の質を維持することがどの企業にとっても困難になっていること、そしてテクノロジーが人間に代わって顧客インターフェイス機能を果たす場面が増えていることだ。
3つめの要因について著者はこう指摘する。いまや被雇用者の90%がサービスに従事しており、どの企業も極めて低いスキルしか持たない従業員を顧客インターフェイス部門で雇用せざるを得ない。
こうした問題は、たとえばファーストフードなどの店頭サービスでは顕著で、こうした職場ではせいぜい4〜5ヶ月しか勤務しない高校生を雇用せざるを得ない。これでは業務に関するスキルを高めるとか顧客サービスを向上するといった水準にはとても到達し得ないのは明らかだ。

企業の中で顧客インターフェイスを運営する立場から考えてみよう。
たとえばコールセンターと店舗が別々の組織に属しているのはそれほど珍しくないだろう。別組織ならば運営の方針やサービスの基準が違っているのは当たり前、もちろん、コンタクトしてきた顧客の情報も共有されてはいない。
組織内で考えれば、これはそれほど不自然には感じられない。現に私の勤務する組織でも、店頭とコールセンターとのサービス基準はまったく別だし、顧客情報も別個に管理されている。コールセンターに問い合わせをした顧客が来店しても、店舗のスタッフにとっては初めてのコンタクトとしてしか認識されない。

だが、これを顧客の立場で考えれば、大きな不満の源泉となることもまた確かだ。
コールセンターに問い合わせたあとで店舗を訪れたとき、顧客にとってはその組織へのコンタクトはすでに2度目だ。過去に何度も購買履歴があれば、顧客にとってはすでに自分が得意先として認識されているとさえ考えているかもしれない。
だが、多くの組織では店頭で一見の客と同じ対応をされるだろうし、コールセンターでも数多くの問い合わせのひとつとしてしか扱われないだろう。ここに、組織の側と顧客との意識に大きなギャップが生じ、それは顧客にとって不満の要因となる。

この状態を放置していたのでは、顧客インターフェイスでの差別化などはとても実現不可能ということが自覚できる。
著者のいう顧客インターフェイスのリエンジニアリングとは、こうしたバラバラの運営や組織を、全体観を持って捉えなおし、顧客の視点から再設計することに他ならない。当然、運営する組織の見直しも必要になるだろう。
本稿の主張は、多くの組織にとって未だ手つかずになっている顧客インターフェイスの再設計と、新たな差別化のヒントを提示している。短い記事だけにイントロダクション程度ではあるが、多くの示唆を含んでいるように思える(なお、著者による記事と同名の本も出版されている。こちらならばより詳細な記述が期待できるかもしれない)。

Posted by dmate at 2005年02月01日 23:38 | TrackBack
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