2005年03月24日

Innovationに頼らない成長

Harvard Business Reviewの3月号だが、なかなか盛りだくさんの内容。最近の傾向としては、マネージメントに関するもの、特に変革の担い手となるリーダーシップと、新たな成長機会を創り出す戦略とが毎号大きく採り上げられているように思える。

今回紹介するのは、Rita Gunther McGrath氏とIan C.MacMillan氏とによる「MarketBusting :Strategies for Exceptional Business Growth」。前回の記事に続いてリード文を紹介すると、次のようなものだ。

A company can't outperform its rivals if it compete the same way they do.
Reconceive your business's profit drivers, and you can change from copycat to king of the jungle.

私訳「企業がライバルと同じやり方で競争する限り、彼らを超えることはできない。自らのビジネスにおける利益の源泉を再定義すれば、模倣者(copycat)からジャングルの王者になれる。」

上記の文章からは、先日届いた「ブルー・オーシャン戦略」に通じるイノベーションを扱っているのかと思うが、内容としてはもっと身近なものである。
事例としてあげられている企業は、新しい需要を創り出したのでも技術革新を成し遂げたのでもなく、顧客が価値を認める領域に自らの事業を重ね合わせることに成功したものだ。
顧客が求めるのは、単なる商品そのものではなく、商品とサービスの複合体(あるいはサービスのみ)になっている。紹介されている企業は、自らの事業を顧客の価値にあわせて再定義し、そこで利益を上げられるようにオペレーションを変革、資産の活動度を高めることで高い収益モデルを実現した。

記事では、低リスクで実現できる成長への8つのドライバが挙げられている。すべてを引き写すことはしないが、印象に残ったのは次のもの。
Change your unit of business顧客価値に応じたビジネスの再定義、商品とサービスとの統合やサービス領域の拡大によるバリュープロポジションの強化
Improve your customers' performance顧客が重視する成果指標にダイレクトに貢献するOfferingの実現
Help improve your customers' cash flow顧客のバランスシートを改善するOfferingの提供
いってみれば、いずれもマーケティングの基礎である顧客価値に立脚した商品とサービスの提供と、その低コストでの実現による利益の確保をどう実践するか、ということ。変革や革新ばかりに目を奪われず、これらを確実に実行すれば企業はずっと低リスクで成長できるというのが本稿の主張といって良いだろう。

新規事業は、やはり本業の周辺でそれを補完し拡大するものが最も成功確率が高い。
もっとも、そこに参入障壁をうまく作り込まなければすぐに追いつかれて価格競争に巻き込まれてしまうのも事実だが、継続して行えるかどうかは大きな差となって表れる。常にライバルに先行され、その真似をするコピーキャットでは、所詮手許に残される利益は先行者よりも少なくなるからだ。
すでに届いている「ブルー・オーシャン戦略」は未読なのだが、おそらく方向性としてはかなり近いものがあるように思える。

この記事もご多分に漏れず、近日発売される書籍のダイジェスト版であるとのこと。また買ってしまうような気もしているが、このテーマは多くのビジネスパースンにとって非常に身近で現実感のあるものであり、邦訳されればかなりうけるのではないだろうか。

Posted by dmate at 2005年03月24日 22:27 | TrackBack
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