2005年04月03日

eメールマーケティングの将来〜「Sign Me Up!」

「OnlyOnce」というweblogを書いている、eメールマーケティングのコンサルティング企業のCEO、Matt Blumberg氏他による本。
150ページほどと薄く文章も平易なので、洋書としてはあっという間に読んでしまった。
とはいえ、私にとっては、ということ。具体的には3月の3連休に50ページほどを読み、そのあとは通勤電車で4日間、土曜日に病院のロビーで読了の実質8日間。この間、「Harvard Business Review」なども挟んでいるのでなかなかのペースだったように思う。

いきなり余談だが、私のメールボックスはスパムメールであふれかえっている。
これは、もともと持っていたWEBサイト(毎日のユニーク訪問数が100件ほど)でアドレスを公開していることによるのだろうが、毎日届くスパムは50〜100通ほどにもなる。メールクライアントであるBecky!にはスパムフィルタリングのアドインを設定しているものの、増え続けるスパムには必ずしも有効ではない。
こんな状態だから、差出人名などでメールを振り分けることは重要なメールを見落とさないために不可欠だ。
同時に問題もあって、登録したメールマガジンを一度振り分け設定してしまうと、今度は目につかないので読まなくなってしまう、という弊害が生じる。現に、私は両手に余るメールマガジン登録していながら、ちゃんと目を通すには数種類に過ぎない。

eメールは低コストで豊富な情報を届けることができ、しかもWEBサイトへの誘導も簡単なことから、非常に有効なマーケティングの手段であることは間違いない。
本書の中でも、有効なeメールは極めて大きな効果をもたらすことが繰り返し強調されている。
しかし、売りを急ぐあまりにメールの内容が商品やサービスの告知ばかりになっては、読者は離れていくのだと著者等は警告する。読者は自分にとって役立つ情報を求めて登録するのであり、押し売りを招き入れているわけではないのだ。

本書は3つのパートで構成されている。
特に、読者を惹きつけ、維持していくためのメールコンテンツを作成する方法について書かれた第1部が、日本の読者にとっても関心の高いところではないだろうか。この部分だけを訳出してパンフレットに仕立てても良いかもしれない。
第2部はクリーンなリストの作り方と維持の仕方(何がどうあってもスパマーとみなされないように、というのが著者等が最も心を凝らしているところだ)、そして第3部はeメールマーケティングの効果測定と問題の修正に関わる内容だ。

私が普段読んでいるメールマガジンは数種類と書いたが、それらはいずれも私にとって関心のある情報が掲載されているものばかりだ。
確かに著者の主張通り、自社の商品を並べてこれがお買い得ですよとWEBショップへの来店のみを呼びかけるものは読まなくなってしまう。
とはいえ、読者には喜ばれても、販売にまったく寄与しないメールマガジンを発行し続けるわけにはいかない。そのバランスをいかにうまくとるかが重要だ。

著者は本書の最後にこう記している。

When someone says, "Sign me up to your newsletter" and gives you her email address voluntarily, she is essentially saying, "Sell me something, please." You can't get a better marketing opportunity than that.

確かに、私たちがメールマガジンに登録するのは、その企業の商品やサービスに関心があるからで、しかも、その企業が信用に値すると判断したからこそ。顧客の側からのこうしたアクションを無駄にするのはもったいない。
発信されたメールは、読者に開かれるかどうか、販売につながるクリックをさせられるかどうかという、熾烈な競争にさらされている。確かに低コストではあるが、それゆえ企業の英知を結集して顧客に選ばれるメールづくりが、競争優位を築くうえでのポイントとなるだろう。eメールマーケティングに投資し、人材を投入し育成している企業と、おざなりにしている企業との差は、今後どんどんと開いていくだろう。

Posted by dmate at 2005年04月03日 20:43
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