先日のエントリ「出張時新幹線の心得とは?」について、「かえる日和」のKachilaさんに言及いただいた。
なんでも、朝方3時までの仕事のあとでの出張など、徹夜明けに近い状態での移動が多く、新幹線車内での仮眠はむしろ必須とのこと。確かにこのような状態であれば、無理に起きていると肝心の時間に居眠りしかねない。新幹線での移動といっても、なにも前夜ゆっくりと眠れた人ばかりとは限らないし、場合によっては夜を徹しての仕事の帰りかもしれないということを失念し、一律に否定的に取り扱ったのは少々迂闊だった。
さて、上述の日記の後半部分では、新幹線車内で平然と機密書類を広げることの不用意さについて同意いただいている。下記の表現が、書類を読む本人と周囲の目とのギャップを実にわかりやすく表現していると思った。
自分は移動時間も仕事している「できる企業戦士」だと思っているかもしれませんが、横から見ると機密情報をさらしてる駄目リーマンでしかないです。
Kachilaさんが地下鉄車内で見かけたという事例がまた、衝撃的だ。どの企業かは知らないが、新入社員の5段階評価表に「協調性」「まじめさ」「外向性」「プレゼン能力」と並んで「服装」「みため」といった項目が並んでいたのだそうだ。
「みため」はまさか容姿の美醜のことではないだろうが(そうだったとしたら本当にすごいことだが)、6項目の評価基準の中に「服装」「みため」という項目が占める比率が、私にはやはり驚きだ。わざわざこうした項目が設けられているということは、会社の代表として顧客や取引先に送り出すのに躊躇してしまう、指導が必要な「服装」や「みため」の新入社員が少なからず存在するということを表している。
たしかに、服装や髪型、髭の有無やアクセサリーといった要素については、人によって基準がばらついて当然だ。おそらく、営業職であっても鼻ピアスをしていてどこが悪い、と考える新入社員がいてもおかしくはないだろう。誰もが判で押したように紺やグレーのスーツに臙脂や黄色のストライプネクタイ、という典型的で無難なサラリーマンの服装を無批判に受け入れているわけではない。
けれど、たとえ新入社員でも外へ出て行けば会社の代表、個人への顧客や取引先の評価は容易に会社全体への評価につながってしまうものだ。「それはおかしい」と思うかたもあるだろう、けれど、たとえば外交官の特権的な処遇や年金積立金の無駄遣いの報道に触れたとき、私たちの多くは「外務省の連中は」「社会保険庁なんて」「これだから官僚は」と、組織構成員全体への印象を形作ってしまうはずだ。
そうなれば、基本的にはしっかりとした身だしなみを整え、しかし相手にちょっと関心を与える程度にひねりを加える、という程度の「みため」を維持するのは、むしろ当然のことだろうと私は思う(ただし、私自身が”しっかりとした身だしなみ”という範囲は、周囲の同僚や上司と比べると結構広いほうにはいるようだ。相手によって受け取り方は違うところがややこしいのは事実)。
ところが、社会人としてすでに10年20年と働き続けているにもかかわらず、ちょっと首をかしげたくなるような人々がいるのもまた、確かだ。
私の身近にも、鼻毛がいつも伸びっぱなし、肩はフケだらけ、ワイシャツの袖口が真っ黒、第1ボタンをはずしてネクタイの結び目が横を向いている、ネクタイには大きなシミ、といった人々がたくさんいる。ある時、営業所での業務改善活動のチェックリストを見たが、「鼻毛は切っているか」「ハンカチは持っているか」「スーツとネクタイの色は合っているか」など、学校校則のようなくだらないレベルの記述が並んでいてあきれかえったことがあるのだが、事実、それすら満足に満たせない30代、40代の”ビジネスマン”も世の中には少なくないのだ。もう大人なのだから、自分の責任で身だしなみくらいは管理すべきだし、家族も良く黙って家から送り出しているものだと思う。
最近一番ひどい事例だと、通勤電車でときおり見かけるサラリーマン風の男性で、常にスーツの上下がバラバラでネクタイはせず、ボタンはだらしなく開きっぱなしでカバンも持たずに手ぶら、という出で立ちのがいる。ネクタイはポケットにでもしまっているだろうか、髪もぼさぼさで顔にも生気がない。顔つきは就業と同時に変わるのかもしれないが、だらしのない服装はそのままだろう。彼が営業としてやってきたとして、その取扱品目がかなり魅力あるものでも、私はおそらく彼の「みため」でその勤務先の姿勢を判断し、断るような気がする。あるいは深夜勤務からの帰り道かもしれないが、住宅地から都心に向かうのだから可能性は低い(たとえ仕事帰りでも、スーツの上下がバラバラであって良い訳ではない)。
最低限の基準を満たす「みため」を整えるのは、そう困難なことではない。取り立てておしゃれである必要などなく、清潔にしていれば良い程度のものだ。それでも、それができない”駄目リーマン”が少なくないのだから、会社が社員の躾けにまで乗り出すのも、やむを得ないのかもしれず、何とも情けないものだと思う。
Kachilaさんが見かけた評価表、たしかに「みため」の5段階評価なんて馬鹿げているにもほどがあると思うが、こうした実態から考えると、若いうちから身だしなみの指導をすることも、人事部の大事な仕事になってしまっているのかもしれない。
お邪魔します。こちらこそ取り上げていただいたてありがとうございました。
会社員の身だしなみについて、短くですが日記に書きましたので、良かったらお立ち寄りください。