2005年03月17日

顧客の時間を大切にするリエンジニアリング

HBR(Harvard Business Review)、2005年3月号の記事より「Lean Consumption」を紹介する。
Leanといえば、無駄のないこと、トヨタのカンバン方式に代表される、生産現場などの効率化を語る際に使われる言葉だ。Lean Consumptionというタイトルを見て、最初はモノやエネルギーを最小限しか使わずに環境保全に努める消費活動を指すのだと思った。このため、飛ばそうと思ったのだが、リードの文章にはこうあった。

By minimizing customers' time and effort and delivering exactly what they want when and where they want it, companies can reap huge benefits.

訳してみるとこんな感じか。「顧客の時間や労力を最小化し、顧客が望むものを最適のタイミングと場所とで提供できれば、企業は大きな利益を得られるだろう。」

記事で大きく取り上げられているのは、車の修理の事例。
車が故障したとき、日本であれば購入したディーラーに持ち込むことが多いし、不完全な修理で返されることはまれだ。だが、それは珍しいことのようで、修理業者探しから始まって完了するまでのプロセスが顧客にとって極めて非効率で、しかも煩雑なものであるのが常態であるらしい。
顧客にとっての無駄は、同時に修理業者の業務プロセスにも無駄が存在することの裏返しでもある。取り上げられている事例では、車の修理に関して顧客は120分をかけ、業者は207分を費やしている。しかし、その中で生産的な時間はそれぞれ53%と27%に過ぎないという。顧客の場合には待ち時間が、業者の中では部門間の受け渡し時間が、無駄な時間の代表だ。
この無駄を、業務プロセスや提供する商品・サービスそのもの大きな変革を通じて削減することが、大きな顧客価値につながる。

先日取り上げた書籍「Best Face Forward」では、顧客との長期安定的な関係構築を実現するための、顧客インターフェイス組織のリエンジニアリングが提唱されていた。
リエンジニアリングはそもそも冒頭に述べた「Leanな」業務フロー実現のための手法だった。それはコストダウンを通じて顧客の価値を高め、企業の収益性を高めるものだった。しかし、顧客価値の創造や向上を伴わない効率化は、価格競争の激化を招く側面もあるだろう。
「Best Face Forward」や本稿が訴えるのは、内向きの効率化ではなく、顧客にとっての価値創造のためのリエンジニアリングとって良いのではないだろうか。時間は誰にとっても平等な資源であり、いまや最も大切な資産といっても良いだろう。その資産効率を高めることは、極めて高い顧客価値の実現につながる。
「Lean Consumption」は、新たな価値創造を実現するイノベーションの、ひとつの指針となるのではないだろうか。

Posted by dmate at 2005年03月17日 22:23 | TrackBack
Comments

こんにちは、いつも食い入るように読ませていただいております。リンク掲載頂き、光栄です。大変ありがとうございます。

>時間は誰にとっても平等な資源であり、いま>や最も大切な資産といっても良いだろう。

これは、大きな気づきとなりました。
私のビジネスは、情報産業なので、顧客と接する時間が長く、また同時に、顧客を拘束する時間やサービスが遅延することで顧客をお待たせする時間も長い、という時間産業ともいえる仕事です。
前々から顧客対応を視点に、社内の組織再編が課題であると、考えていました。
>内向きの効率化ではなく
まさにそうだと思います。私を含め、日本語のリストラは間違った用法で使われていると思います。組織のリエンジニアリングをキーワードに顧客時間思考で、社内の改革を推し進めたいと思います。

Posted by: ニタ at 2005年03月18日 11:06

リストラという言葉は、すっかり人員整理と同義になってしまいましたね。
もともとはGEが事業の再構築をしている頃に使われ始めたように思うのですが。

商品やサービスごとの専門性と、顧客へのトータルでの関係構築とをどのように効率的に両立させるかは、私にとっても大きなテーマのひとつです。
最近は営業部門の再構築や再編成がかなり注目されているようで、参考になる情報も増えており、さらに研究し実践に役立てていきたいと思っています。

Posted by: dmate at 2005年03月19日 15:09
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