実をいうと、このエントリのタイトルで生まれて初めて<萌える>と変換したように思う。たいしたことではないのだが、なんだか数年遅れでキャッチした流行を嬉々として使い、哀れみの視線を送られるオヤジになった気分だ。
さて、この本はお薦め。会計について初歩の知識も持たない読者でも、本書を理解すればある程度固い内容の本に進める、絶好の入門書と評価できる。
なぜ本書が”萌える”のか。理由は簡単、本書の著者である山田真哉氏はあの「女子大生会計士の事件簿」の著者であり、本書にも”萌さん&カッキー”が登場するのだ。しかもイラスト付き。
イラストの萌実さんは必ずしも私の好みのテイストではないのだが、まあ、これくらい親しみやすくても良いだろう。電車の中で読んでいると、会計の本とは思ってもらえない危険性はあるが、こうした本にありがちなへたくそなイラストよりもずっと良いのは確かだ。
本書の独自性は、会計の知識を完成した「貸借対照表と損益計算書」という紙から解決するのではなく、「資金源」「資産・財産」「費用・支出」「収益・売上」という、ビジネスに身を置くものであれば誰にでも親しみがあり、理解しやすい概念を用いながら整理していく点にある。このように、ビジネスの実態から会計知識へという明確な方向性は、ビジネスパースン向けの研修として極めて人気の高い「マネジメントゲーム」にも通じるものだ。
そもそも、会計という普段は親しみのない事柄を、その土俵とその用語で解説することにはどうしても限界がある。多くの解説書は最初から決算書の解説を始めてしまうために、初心者にとっては訳のわからない専門用語の世界に放り込まれた気分にさせられるものだといえるだろう。
本書にはそれがない。小説でおなじみのキャラクターが掛け合いでビジネスの流れから結果としてまとめられる数字へと解説を進めていくので、極めてわかりやすいのだ。
また、本書には「女子大生会計士の事件簿」の特別編が収録されている。4部に分けられたストーリーの進行と、本文での解説とが同時進行になっているという仕掛けだ。
これによって、読者は今解説された概念が、実際にはどのような場面で重要になるものなのかを実感することができる。それは必ずしも概念の正確な理解には結びつかないかもしれないが、初心者向けの解説書であることを考えれば、メリットのほうがはるかに大きい。
もちろん、小説のほうを読んでいなければ理解できない内容にはなっておらず、単独で入門書として読めるものなので安心だ。
ある程度知識を蓄えてしまえば、決算書ほどわかりやすいものはない。なにしろ、どんな経営を行っているかが数字で書き表されている文書なのだ。確かに粉飾などの操作と無縁ではないものの、人間の主観で書かれる営業報告などよりもはるかに雄弁なものだ。
けれど、取っつきの悪さのために、会計に関する知識が比較的普及しないのは、経営者やマネージャの戦略思考力を高める上でも大きな障害になってしまっていると私は思う。数字は創造力の足かせではなく、その安定性を高めるのに非常に役立つ補助翼なのに。
もしあなたが会計については初心者、もしくは部分的な知識を持つにとどまっており、ビジネスの視点からその全体像を理解したいと願っているなら、本書はうってつけだ。たった1,365円を惜しむべきではない。
<女子大生会計士の事件簿>世界一やさしい会計の本です
山田真哉 著
日本実業出版社
<2005.4.8追記>
何度かコメントをいただいているニタさんの「教えて会計」は、ほぼ毎日会計や経営関連の書籍を紹介しているパワフルなweblogです。この本もとり上げられていましたので、古い記事からではありますが、トラックバック送信させていただきます。
d-mateさん、こんばんは!
TB、コメントありがとうございました。
記事にもご丁寧に追記で、私のブログのご紹介頂き、本当に嬉しいです。
これを励みに、また頑張ります。
最近、こちらのブログの影響で、
オープンブック・マネジメントの原書にも
チャレンジしています。年内で読めるかちょっと自信はないのですが(笑)。