自宅の近所のスーパーマーケットには酒類のコーナーがあるのだが、ビールの品揃えにはあまり熱心とはいえない。アサヒスーパードライ、キリン一番搾り/ラガー/クラシックラガー、サントリーモルツ、サッポロ黒ラベルという定番商品に加え、サッポロヱビスとその黒がある程度だ。いずれもごく普通の、定番商品ばかり(もちろん、発泡酒はたくさんあるが、ここでは対象外)。
このかわりばえのしない棚に、もう1社割り込んでいるのが「銀河高原ビール」だ。コンビニエンスストアやスーパー店頭で、大手4社と並んで販売されていることも最近では珍しくなくなり、少なくとも店頭のシェアでは大手5社といっても過言ではない勢いが感じられる。
我が家も銀河高原ビールはけっこう好んで飲む。
最も買うことが多いのは「小麦のビール」で、さわやかな飲み口が気に入っている。この会社のビールはあまりトゲがないというか、おとなしいのだが味わいはしっかりと残しているので、少しだけ飲んでも充足感があるのが特徴だと思う。他にも「白ビール」や「有機栽培ビール」が陳列されていることがあるが、やはりここの定番といえば私にとっては「小麦のビール」であり、ときおり買える「ヴァイツェン」だ。
この会社、うまいなあ、と思ったのは、JRと組んで発売した「銀河鉄道ビール」だ。
松本零司の「銀河鉄道999」のイラストを缶にあしらったこのビール、もちろん、キリンやアサヒの定番商品よりも高いのだが手に取る機会は結構ある。
そもそも、出張帰りの新幹線では缶あたり数十円の差はあまり気にならないようで、売店でも「サントリーモルツ ザ・プレミアム」などのプレミアムビールの陳列が多い。価格が気に掛かる乗客はそもそも発泡酒を選ぶだろうから、これは理にかなった販売方針といえる。もちろん、この「銀河鉄道ビール」も好評のようで、新幹線の乗車前による売店では比較的簡単に買うことができる。
最初にこのビールを買い、妻にメールで「銀河鉄道ビールを飲んでるよ」と伝えたところ、画像を添付しなかったのが災いして「またくだらないオヤジギャグを」という反応だった。たしかにできすぎな企画ではあるものの、比較的高額なビールでも売れる場で、鉄道という移動手段にマッチしたデザインでの販売、しかも自社ブランドとの類似性ある商品名というのは、実にうまい商品作りだ。これを仕掛けたのがJRの側か銀河高原ビールか、はたまた広告代理店等なのかは知らないが、なかなかの企画力だと感心させられる。
さて、この銀河高原ビールが家庭での需要に切り込もうとして大宣伝を行っている商品がある。定番のひとつである「白ビール」を160mlという小さなパッケージにし、洒落た寝酒として楽しめるようにした「おやすみビール」だ。
ターゲットである中高年の男女に人気の高いみのもんたをキャラクターに大宣伝を行い、ビール酵母がビン内に残されている点を強調、健康情報番組でレギュラーを務めるみのもんたのイメージをうまく使っている。
けれど、私はこのビール、絶対に買わない。
理由は簡単だ、ビールの缶にメーテルの顔があるのはかまわないが(「銀河鉄道999」の登場人物です、念のため)、みのもんたが嬉しそうにガハハと笑っているデザインの缶ビールを、自宅に持ち込もうとは私には思えない。
いっておくが、私はみのもんたが決して嫌いではない。どちらかといえばわりと好感を持っている方だ。けれど、この間のデザインではちっともビールはおいしそうに見えない。むしろ、テレビの健康番組の情報に踊らされて次々と”身体に良い”とされる食材を試す、浅はかで踊らされやすい消費者に、自分がなったような気がするのだ(まあ、実際にそうではないのか、と問われれば否定はできにくいのだが)。
みのもんたの大ファンならばともかく、このデザインに対する感覚は、私のものがわりと一般的なんじゃないかと思う。
「銀河鉄道ビール」は見事だったが、今回の「おやすみビール」はさすがに”過ぎたるは〜”だったのではないかと思うのだ。