2004年06月01日

撮って貯めて加工して

デジタルカメラがもたらした最大の変化といえば、写真一枚あたりの限界コストの大幅な低減だといえるだろう。一枚の写真を追加で撮影するためのコストは、デジタルではゼロに近い。
単純な計算だが、50,000円のデジタルカメラで2,000枚撮影すれば一枚あたりのコストは25円。おそらくフィルム代と現像代でも同じようなものではないだろうか。しかも、デジタルの場合は最初に払ったカメラ代やメモリーカード代以外に新規の出費はないので、ランニングコストがゼロである点が大きい。また、とりあえず撮って、気に入らなければすぐに消せるというのも大きなアドバンテージだ。結果として、フィルムを使っていた頃に比べてデジタルでの撮影枚数は何倍にもなるはず。一本のフィルムを何ヶ月もかけて使い切る、という方も少なくないだろうが、同じ方がデジタルカメラなら一回の旅行で100枚、200枚と撮影すると思う。

私の場合、主に使っているデジタルカメラは400万画素で、撮影データは一枚あたり3.5MBほどになる(RAWデータの場合、JPEGならその半分程度)。一回の撮影で撮る枚数はかなりばらつくが、100〜500枚というところだから、多くて2GBほどのデータが新たに作られることになる。このデータは帰宅後にとりあえずノートPCに保存するのだが、PCに内蔵のハードディスクは40GB、空き容量は半分ほどなので10回も撮影をすればいっぱいになってしまう。旅行中などはとりあえず宿に戻ってからノートPCにデータを移しておくだけだが、どんどんと蓄積するには容量不足は明らかだ。
しかも、このノートPCは毎日のように持ち歩いているので、いつ落として壊してしまうかわからない。ディスクのクラッシュでは一度写真データを失っており、同じ間違いは繰り返したくはないので、写真データは外付けのハードディスクにも保存している。IEEE1394接続のタイプで、容量は80GBのものだ。ハードディスクは年々大容量化と価格低下が進んでいるので、現時点ではもっとも安価なデータ保存法のひとつだといって良い。
とはいえ、ハードディスクもいつかは壊れるもの、大切なデータのバックアップがこれだけでは心許ないので書き込み型DVDドライブも併用している。4.7GBの容量を持つDVD+Rディスクにも写真データを保存し、全ての写真がDVDディスクとハードディスクの2箇所に存在するようにしている。欲をいえばハードディスクをミラーリングしておけば安心だが、今のところそこまではしていない。

旅行中といえば、一度だけ肝を冷やしたことがあった。友人の結婚式のためにハワイに行った際、撮影した写真をノートPCに保存したは良いのだが、帰国後にどうやらハードディスクの調子が悪く読み出せないデータがあることがわかったのだ。結婚式の写真は撮り直しができない。かなり焦ったのだが、何とかほとんどの写真を別のディスクに保存することができた(ノートPCはその後修理した)。
最近では書き込み型DVDドライブを内蔵して、しかも携帯に適した軽さのノートPCも増えてきており、こうしたマシンを使って旅行先でDVDディスクに保存してしまえれば便利だろうと思うのだが、そうたびたび買い換えるわけにも行かない。携帯型のDVD±Rドライブが安くなるのをもう少し待つのが理性というものだろう。

いま使っているカメラ(ニコンD2H)を購入してちょうど半年が経過したが、撮影枚数は10,000枚を超えたところ。決して少なくはないが、このカメラを使う層の中では普通ではないかと思う。もちろん、この10,000枚は全て上記のように2つ以上のバックアップが取ってある。
一般的にはここまで多くの撮影はしないだろうが、撮影した写真をカメラ内のメモリーカードにおきっぱなしという方や、パソコンのハードディスクに保存したきり、という方にはぜひ何らかの形でバックアップを取っておくことをお勧めする。
経験のない方には実感しにくいかもしれないが、ハードディスクというものはある日突然壊れるものだ。異音がするなどの前兆がある場合はまだしも、前触れもなしに突然読み出せなくなる場合だってある。大切な写真を一瞬のディスククラッシュで失わないように、バックアップは面倒がらずに取っておいた方が良い。最近のパソコンならば、DVD-R/RWドライブが標準装備されているものが多いだろうし、少し古いものでもCD-R/RWドライブならついているだろう。たった30分か1時間の手間を惜しんで、かけがえのないデータをなくしては元も子もない。
写真の明るさや色合いを変えたり、赤目を補正したりといった加工をされる方も多いだろうが、こうした場合も元データは別に取っておき、加工後の写真は名前を変えて保管するのが良いだろう。仮に加工に失敗した場合、元データがあればやり直すことができるが、上書きしてしまったデータを取り戻すことはできない。ハードディスクは数万円、DVD-Rのディスクは数百円にすぎないのだから、データ保存用の追加費用を惜しんでも仕方がないと私は思う。

ただ、こうして考えるとデジタルカメラは決してランニングコストゼロで写真が撮り続けられるものではないことに気がつく。メディアは大容量のものがあればいいとはいっても、最初から思い切って投資ができなければ何度か買い足すことになるだろうし、上述のようにバックアップ用に各種メディアが必要だ。高画素のデジタルカメラを買ったために加工に使うパソコンの処理性能に不満を感じ、買い換えるハメになるかもしれない(なんだか自分の無駄遣いの経歴を告白している気になってきたのだが)。

さらに重要なことには、ネガフィルムでは当然のように手許に残っていた、プリントされた写真がデジタルカメラではわざわざ作らなければ得られないことだ。WEBサイトやアルバムサービスにデジタル写真を公開して遠隔地の知人にも見せられるというのはデジタルならではの楽しみ方だが、一方で集まってワイワイと写真を見ながら話す楽しみは、プリントにはかなわない。きちんと編集されたアルバムは記念品としても喜ばれるが、CD-Rに保存された写真は中身は同じでもありがたみは少ない。
カメラ店やDPE店ではデジタルカメラのデータをプリントするサービスも当たり前になってきている。実をいえば、私は自分のために撮影する写真が圧倒的に多いので、この手のサービスは滅多に使わない。それでも、父が入院していた際に家の庭の様子を撮影し、見舞いの前にプリントをしてミニアルバムに収めたものを持参したときにはずいぶん喜ばれたし、プリントされた写真を改めて見直すきっかけにもなった。
デジタルカメラによる写真のプリントサービスがどの程度使われているのか、フィルムの時代に比べて増えているのか減っているのか、手許にデータがないの断言できないのだが、おそらくプリントの需要は縮小しているのではないだろうか。冒頭に書いたとおり、デジタルカメラでは撮影枚数が多くなりがちなので全てをプリントすると無駄が多くなってしまうし、とはいえ一度セレクトしてから必要な写真のみを保存したメモリーカードを店に持ち込むのは面倒だ。一方、カラープリンターで自宅でプリントするのも、実際には面倒だったり時間がかかったりでそれほど多くは使われていないのではないだろうか。少し前の機種だとあっという間に退色してしまうという欠点もある。

プリントばかりだった時代と比較して、写真の楽しみ方のバリエーションも増えている。
けれど、デジタル化された写真を家族や仲間が集まって楽しむ手段には、まだ決定打がない。最近になってテレビにメモリーカードのスロットを搭載して写真データを表示できるものも出てきているが、こうした機器が増え、使い勝手が改善されることで写真の楽しさはもっと広がるのではないかと思う。

Posted by dmate at 2004年06月01日 21:54 | TrackBack
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