2004年04月21日

私がニコンを選ぶわけ

一眼レフカメラは各社から出ているが、イメージとしてはキヤノンとニコンが2大メーカーであるといっていいだろう。一眼レフの中でもデジタルについていえば、ハイエンドから普及機まで複数の機種をラインナップしているのはこの2社だけであり、これから購入を検討する上でこの両社をはずすことは考えにくい。

そんな中で、私はニコン「D2H」を使っている。もともとは8年ほど前に一眼レフを購入する際、ニコン「F50D」という機種を選んだのが最初で、「F90XS」「D1」と続けてニコンのカメラを買い続けたことになる。もともと妻はキヤノンのEOSシリーズのカメラを使っており(標準と望遠のズームレンズだけを持ち、カメラボディは借りていたらしい)、購入時にもEOS Kissを選ぶつもりだったらしいのだが、私が店頭でニコンを選んでしまったのだ。買ったカメラが「F4」や「F5」ではなく、普及価格帯の「F50D」だったくらいなので、使い勝手や性能で選んだわけではない。ニコンというブランドへの私のあこがれだけで選択したに等しい。

選んでしまってからやっと冷静になって両者の特長を見比べるようになったが、ニコンの一眼レフユーザーにとってうらやましいのは交換レンズのバリエーションだった。
キヤノンではかなり以前から手ぶれ補正機能付きのレンズをラインナップしており、電池の消耗が激しいとは聞いていたものの、体力の低下でカメラをしっかりと構えることができなくなってきた私には喉から手が出るほど欲しい商品だった。
早いピント合わせを実現するレンズ内蔵モーターもキヤノンの魅力だった。私は最近ではほとんどオートフォーカスしか使わないのだが、それでも必要に応じてすぐにマニュアルフォーカスへの切り替えが可能なレンズの存在には「ニコンのボディでキヤノンのレンズ群が使えたらなあ」と嘆くしかなかった。
だが、この数年で状況は大きく変わっている。新たに発売されるレンズのほとんどは超音波モーターを内蔵してすばやいオートフォーカスと、特別な切り替え操作なしでのマニュアルフォーカスへの移行を実現している。あわせて、VRと呼ばれる手ぶれ補正レンズも徐々に増えてきた。デジタル一眼レフ専用のコンパクトな広角系レンズも増えている(ニコンの一眼レフデジタルカメラはいずれもフィルムよりも撮影面が狭く、専用レンズをコンパクトにできるのだ)。デジタル一眼レフで使える対角魚眼レンズなど、他社のユーザーも興味津々なのではないだろうか。
キヤノンにさまざまな面で追いつく一方で、絞りを調整するためのリングがなくなるなど失われたものも多い。私の所有する「F90XS」など、絞り優先モードで絞り値を設定するためにリングを必要とするカメラボディでは、非常に使いづらくなってしまったりと過去からの互換性に対する割り切りもはっきりしてきた(その一方で、「D2H」ではオートフォーカス以前の古いレンズを使えるようにしているのは、さすがだと思う)。

ニコンとキヤノンとに限らず、ライバルメーカー同士の商品がおおまかには高い水準で拮抗する以上、そこで重要なのはブランド力だ(もちろん、店頭での推奨を得るための流通政策も重要だろうが、コンシューマが選ぶ商品では、やはりブランド力のもつ意味合いは大きい)。ニコンのイメージとは、戦場カメラマンやNASAなどの過酷な条件で使われ続けた堅牢性や信頼性、サービス網の充実なども含む基本性能の高さや誠実な企業姿勢といったものだろう。キヤノンに比べるとあか抜けないし、先進性やスマートさでは譲るが、強いイメージがあるのはきちんと使えば強みになる。
もちろん、ハイアマチュアに一眼レフを売るのと、カメラ初心者に普及型の商品を売るのとではブランド力の効き方も違う(ところで、プロ向けの機材を使うようなハイアマチュアを指して「プロシューマ」などと表記しているサイトを見かけるが、調べればすぐにわかるとおりこれは明らかな誤用だ)。ニコンのもつ堅牢・質実剛健といったイメージは、一方で「難しい」「高機能すぎて使いこなせそうにない」といったものに転化しがちだ。ニコンはコンパクトカメラや普及型一眼レフでは必ずしも成功したメーカーではなく、女性ユーザーを意識したプロモーションを展開しているものの、高い成果に結びついているようには思えない。
だが、ここへ来てコンパクトタイプのデジタルカメラにとってカメラ付き携帯電話が強力なライバルとなりつつある。おそらくこれまでコンパクトカメラやレンズ付きフィルムが占めていた市場の相当量は、カメラ機能付き携帯電話によって奪われるだろう。その時、ニコンのもつブランドイメージは生き残りに有利に働くかもしれないが、カメラそのものが今の形では残らないのかもしれない。

いずれにせよ、私はニコンを選ぶのは、ちょっとやそっとでは壊れそうにない堅牢性や信頼性によるものだ。スペックにしても、バッテリーが新品で最良の状態での最高性能を表示するのではなく、悪い状態でも保証できるものを示すところがむしろ信頼できる。圧縮RAWでの記録可能枚数にしても、圧縮度合いによって変動があることを前提に、非圧縮での枚数しか表示しないなど、確実な約束しかしない態度はかたくなでさえある。
こんな態度はちょっと商売下手であるともいえるが、これであの商売上手のキヤノンと張り合っているのだからたいしたものだ。
カメラは非常に親しまれているものであると同時に、趣味性の高い商品でもある。それゆえ、新商品が発表されるとディスプレイ上で画像を拡大してノイズがあると騒いだり、ちょっとしたホワイトバランスの狂いを大げさに取り上げて商品に欠点があると言い立てるユーザーが多いのも実態だ。問題をきちんとメーカーに伝えることは大切だが、完璧な商品などないのだ。あまりに神経質に騒ぐより、写真を楽しんではどうなのかと思う。

Posted by dmate at 2004年04月21日 22:47 | TrackBack
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