2004年04月08日

やっぱりかっこわるいけどなぁ〜「なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか」

最初に一言、この光文社のペーパーバックシリーズ、たしかに軽くて携帯しやすくカバーがないために扱いも楽だ。しかし、この表紙のセンスは何とかならないのだろうか。どの本の装丁も、かなり下品で頭が悪そう。これで買うのをためらう人も多いのではないかな。もっとも、何も考えずにデザインをしているわけではないだろうから理由はあるのだろうけれど、ちょっと私には理解できない。
それはそうと、このタイトルを見て私はとあるご近所を思い出した。

私は一昨年まである地方都市に住んでいた。そのあたりは車社会で一家に2台3台は当たり前、駐車場も月々3,000〜5,000円で借りられる土地だ。
自宅から駅へ向かう途中に、いわゆる安アパートがあち、その一角の住人がまさに「安アパートに住んでセルシオに乗る」人物だったのだ。彼はそのセルシオを歩道に路上駐車するというダイナミックな違法行為を行い、さらにはイヌを飼うという(イヌ自体はかわいらしい柴だった)、社会のルールなど自分自身の欲望の前には無に等しいと信じるような人物であったので、そもそも自分の消費行動に疑問を抱くはずもないのだが(偏見か?)、いずれにせよ、私はそのアンバランスな行動を心底バカにしていた。

さて、本書ではこうした消費行動に対して「あとさきを考えないでお金を使うこと」と「あとさきを考えているけれど今お金を使うこと」は違う、と主張している。もしポルシェに乗っている本人が考えた結果として資産形成よりも好きなポルシェを選んだなら、それは豊かな消費だ、というわけだ。
私がバカにしていた近隣住民が、実際にどれほど考えた上でアパートに住んで高級車を乗り回していたのか、私には推し量るすべはない。あとさきを考えているかどうかは本人の自覚でしかないのだ。しかし、それを

「ポルシェに2千万円お金を使った」という結果よりも、「ポルシェのためなら、2千万円使ってもいい」と思う課程のほうが、重要であることに気づきます。
(中略)
買い物の意味が、結果からプロセスへと大転換したのだと思います。

と説明してしまうことは、いってみれば「なんでもあり」になってしまうではないか。

著者は、この本の目的を以下のように示している。

この本はマーケティングの本としてではなく、自分も含む個々の生活者に向けて「お金」「買い物」について何らかの答えを提示したい、という意図で書いています。

しかし、読み終わった私の感想は、この本は紛れもなくマーケティングの側、すなわち消費者にモノやサービスを売る側の視点で書かれた、というものだ。ここで取り上げられたさまざまな消費行動について、著者の基本的なスタンスは、楽しく豊かに消費することは決して悪ではないと、自己表現としての消費を楽天的に賛美しているように見受けられる。
この論理はたしかに説得力があるものの、結局は全ての人々の消費行動を「あなたの行動は正しいのですよ」と認める理屈でしかないように思う。それは当然、売る側にとって都合の良い論理だ。
全体としては暇つぶしにもってこいの軽い読み物として良くできている。だが、これが「消費者側の論理」なのだと主張されては、少々首をかしげざるを得ないのだ。

なぜ安アパートに住んでポルシェに乗るのか〜ミステリアス・マーケット考現学
辰巳渚 著
光文社

Posted by dmate at 2004年04月08日 22:50 | TrackBack
Comments

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Posted by: debt consolodation at 2006年02月07日 18:49
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