私が毎日持ち歩くPDA、それがシャープの「Zaurus SL-C750」だ。
このマシンの特長は、幾多のファンサイトで語られ尽くしているので繰り返すまでもないが、実用サイズのキーボード、美しいVGA解像度の液晶、そしてPCのデータをそのまま持ち込める柔軟性だ。購入したのが2003年の春(たしか5月の中旬だった)なので約1年ほどになるが、今のところトータルでは満足しており、買い換えの予定はない。それどころか、妻が社内昇格試験に通った際、合格祝いとして同じ機種をプレゼントしたのでわが家にはこのマシンが2台ある。
このマシンの魅力はやはりキーボードとデータの互換性につきる。
スケジュールの確認などのPIM機能においては、このマシンは他のPDA(たとえばPalmやPocket PCなど)には及ばないといっていいだろう。しかし、どこでもテキストファイルを作成でき、簡単にPCとやりとりができる環境としてはかなり優れている。データはごく普通のテキストファイルなので、文章作成はZaurusとPCとの間で全くシームレスに行える。もちろんスケジュール管理などのPIM機能も使ってはいるものの、このマシンは第一には文章作成環境なのだ。
もちろん、このweblogのエントリーのいくつかもZaurusで作成したものだ。出張が多いので帰りの新幹線などは格好の機会になっている。おかげで読書量が少し落ちてしまったが。
では、これが私にとっての理想か、と問われるとそうでもない。
不満はいくつかある。まずは絶対的なパワーの問題で、スケジューラなどの動作が遅いのはソフトウェアを実行するCPUなどのパワー不足によるものだろうし、デジタルカメラで撮影したJPEGを閲覧するにもかなり動作がのろい(私のデジタルカメラは400万画素タイプで、記録されたJPEGファイルは1.7MB程度だから、そう大きいわけではない)。
標準のソフトウェアが必ずしも良くないのも問題で、メールクライアントは必要なときにしか触りたくないほど使いにくいし、スケジューラも出来がいいとはお世辞にもいえない上に選択肢も狭い。多くのソフトウェア開発者の努力にもかかわらず決定版がないのは、プラットホーム自体の限界なのではないかと思える。
また、せっかくの美しい液晶画面を楽しめるよう、バックライトを強めにしているとあっという間に電池が切れてしまうのも大いにバランスを欠いた点だ。補助バッテリーも持ち歩いてはいるが、標準状態で長持ちするに越したことはない。
上記の不満を解決するのはPDAではない。結局のところ私は「Zaurusサイズのフル機能のPCがほしい」のだ、もちろんバッテリーで3〜4時間は使えるものを。そんな商品は現存しないから、少しずつ我慢をしてPDAを使っている。用途や場面によって割り切りが必要だよ、という意見もあるだろうが、私自身はしなくていい我慢ならばしたくないのだ。たとえば、Palmを使っていたときには長文のテキスト入力は不可能だとあきらめていたが、Zaurusはそれを可能にしてくれた。ならば、テクノロジーは次の願いも叶えてくれると期待しているわけだ。
私のPCの用途はそれほど多様ではない。メールの送受信、WEBの閲覧、テキストの作成、フォトレタッチ、そしてweblogやWEBサイトの更新といった程度。ただし、フォトレタッチが入っているのが問題で、こいつはCPUパワーと大量のメモリ、もちろん大容量のストレージを必要とする。
すべてをモバイル環境で整える必要はないではないか、と考える方も多いと思うが、私の理想は上記の全てがストレスなく行える環境を常に持ち歩くことだ。現在メインに使用している高性能でバッテリ寿命も長いThinkPad X31は、重量とサイズ以外ではこの理想にかなり近い存在だ。ようは、これがZaurusサイズになってくれればOK。電車や飛行機の中ではコンパクトな状態で使い、会社や自宅、あるいはホテルの部屋では薄型の液晶画面とキーボードを装着して省スペースのデスクトップPCに、なんていうのが希望。そう、かつて多くのPCユーザーがあこがれた、AppleのPowerbook Duoのコンセプトをさらにモバイルユースに特化させたマシンといえる。液晶画面とキーボードユニットはあわせて500gくらい、本体は300g程度に押さえ、周辺機器をあわせて1kg以内なら、私の腰痛もかなりマシになるんじゃないかと思う。
もちろん、そんなのは今は不可能だ。ThinkPadだって必然性があって今の大きさなのだし、内蔵する2.5インチのハードディスクドライブがZaurusと良い勝負の大きさなのだから。
これまでに販売されたPCの中ではSONYのVAIO Uシリーズがかなり理想に近いもののように思われたが、直販サイトで購入エントリーをしてから3ヶ月も案内がこないという供給体制では購入するしないの問題外だった。むしろ元気なのは海外の企業で、ここ1年ほど、海外の展示会などに参考出品される開発途上の商品に超小型のPCがちらほらと見かけられるようになっている。いずれも発表こそされたものの商品化には至っていないようで、技術面だけでなくマーケティング観点からもハードルは高いのだろうと伺うことができる(どんなに納期遅延で評判を落とそうとも、売れて儲かるものならSONYはUシリーズのVAIOを出し続けているだろうが、このラインは消滅したままだ)。
それでも、夢を見ることや希望を語ることは自由である。VAIO Uシリーズの復活でも、シャープによるZaurusコンセプトのPCでもかまわない、IBMにだってPalmTop PCという歴史がある。いろいろと難しい事情はあるのだろうが、ぜひ実現してもらえないものだろうか?