2004年03月26日

本は書店で買おう

私が普段使っている検索エンジンはGoogleだ。いささか多くのサイトが引っかかりすぎるのは事実だが、Yahoo! Japanのディレクトリのようにスタートのころに登録されたと思しき、すでに更新の行われていないサイトばかりが並ぶのに比べるとずっと早く目的の情報に行き着ける。
このGoogleだが、私がこのweblogをスタートした翌日には、すでにロボットが訪れていた。たしかd-mate.comの開設時にも、ほんの数日でロボットによるアクセスがあり、1週間程度で検索結果に現れるようになったと記憶している。実感として、新鮮な情報がきちんと登録されているのがわかるのだ。

このサーバを借りているXREA.COMにはアクセスログの閲覧サービスがあるのだが、そのGoogleでの検索からの来訪者が、ついに現れた。解析結果だけを見ているのでもちろんどこのどなたかはわからないのだが、初日の検索語は「重要顧客マネジメント」「ピーターの法則」そして「DVDのコピーの仕方」だった。前2者については私にも覚えがあるのだが、購入を検討している本について事前に感想や批評などを集めて参考にしよう、ということだろうか。あるいは、読んだあとで他の読者による評価を求めたのかもしれない。いずれにしても、書評というのは一定のニーズがあるコンテンツなのだと実感できる(後者については、なんというか、「勝手にやってください」というところだ)。
AmazonやBk1などのオンライン書店でも、読者によるレビュー投稿が楽しめる。実にさまざまな読み方があるものだと感心させられるのだが、書評によって購入を決めたという経験は私にはない。本の購入については私は保守的で、これほどオンライン書店が便利になっているにもかかわらず、本は書店店頭で手にとって選ぶ。これは出張時に出先で買うことが多い、という事情にもよるのだが、装丁や紙の手触り、厚さや紙質なども本というモノの重要な要素だと思うからだ。またなんといっても、たとえ5分や10分の限られた時間であっても、書店であれこれと買うべき本を探し迷う時間は楽しい(もっとも、迷って歩けるほどの大型書店に容易にアクセスできるがゆえの楽しみであることは確かだ)。

今、出版業界は危機的な状況にあるという。ノンフィクション作家である佐野眞一氏の『誰が「本」を殺すのか』は、本の作り手から読者へ届くまでの流通、出版後のストックとしての図書館など、本を取り巻く今を「通し」で描いており、その内容には本好きとしてショックを受けることが多い。本が読者に届くまでが詳細に取材されているこの本は、読者としての自分自身を見つめ直させる力がある。
「本好き」とは書いたものの、今の私にはそう名乗る資格はないかもしれない。このところ小説をほとんど読まなくなったし、持ち歩きに楽だからと新書ばかり買っている。想像力や集中力を要しない、楽なものばかり読んでいるからだ。しっかりと理解しながらでないと進めない本に取り組む体力が低下しているのは忙しいからとか年齢のせいといった言い訳ではすまされない。よろずに対して散漫な姿勢が身に付いてしまっているのだろう。本当に引き込まれた時には、音楽など不要だし時間も食事も忘れるのが普通だと私は思う。実際、子供のころは学校から帰って夕食に呼ばれるまで、活字を追い続けるのが日課だった。読者としての私は、数十年をかけて確実に劣化していると認めざるを得ない。
読書は時間を消費する。娯楽が多様化した一方、1日が24時間なのは変わらないのだから、じっくりと本を読むのは実に贅沢な楽しみだといえるかもしれない。この贅沢を最大に享受できる時間でもある小中学校のころに、テレビゲームなどがなくて本当に良かったと思っている。負け惜しみではない。ゲームがあったら私は今頃スポーツ新聞と週刊誌と夕刊紙しか読めないつまらないオヤジになっていたことだろう。

子供たちに本を読ませろ、とか、ゲーム機を取り上げろ、などと主張するつもりはない。それは所詮アナクロニズムだ。ゲームだって想像力を喚起して物語の世界へ子供たちを引き込む力を持っている。
大切なのは本というメディアではなく、物語なのだろうと私は思う。そのメディアがゲームやコミック、アニメーション映画やテーマパークであってもいい。優れた物語を産み出し、残し、形を変えて届け続けることが必要なのだ。
書店へでかけるのは、物語との出会いを求める冒険だ。このときめきはまだオンライン書店で得ることはできない。それゆえ書店は単に出版社別や作家別に商品を並べて陳列するのではなく、アドベンチャーゲームの世界であってほしい。そして本を選ぶ側の読者も、会社や学校に強制されるのではなく、自らの物語と世界観を創りに行こう。一人一人の世界観がおもしろくなることなしに、世の中はおもしろくなんてならないのだから。

Posted by dmate at 2004年03月26日 23:01 | TrackBack
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