何を隠そう、私はビール好きだ。決してたくさん飲めるほうではなく、むしろ酒には弱いのだが、おいしいビールがあると簡単に幸せになれる。
日本で一番多く飲まれているビールは、ご存じアサヒスーパードライなのだが、実は私はドライビールがあまり好きではない。なんだかからいばかりでアルコール入り炭酸水に麦の風味をつけたものに感じられてしまうのだ。蒸し暑い夏の夜にビアホールであおるには適した味なのかもしれないが、ビールはそれだけのものじゃない。スーパードライがこれほど飲まれている背景には、日本でのビールの飲まれ方が実に画一的で、単なる止渇飲料ととらえられてしまっていることの表れなのだろう。
比較的入手が容易な国産ビールの中で目下一番おいしいと思えるのが、サントリーのモルツスーパープレミアムだ(地ビールまで拡げると他にもあるだろうが、普通にスーパーや酒屋で買えるもので考えた)。喉越しだけではなく、しっかりと苦みや甘みなどの味わいがり、香りも良い。炭酸アルコール飲料ではなく、きちんと麦を発酵させてつくったという実感が得られる味だ。
また、最近リニューアルされたキリン一番搾りもかなり良くなったと思う。登場以来徐々に味が変化して最近ではグラスについで飲んだらスーパードライと区別できない代物になってしまっていたが、今回の変化は大歓迎だ。
比較的入手しやすい輸入物の中ではサミュエル・アダムスのボストンラガーにとどめを刺す。「入手しやすいなどといっても近くのスーパーにはないぞ」という声もあろうが、このビールは東京ディズニーシーの「テディ・ルーズベルト・ラウンジ」で飲めるのである。このパークの年間パスポートを持っている私にとっては、実に入手が容易なビールなのである。香りも味の濃さも国産の大手企業ビールにはないもの、苦く甘く、それでいてスッキリとしたこの味こそ、本当に「コクがあるのにキレがある」だと思う。
そんな好みなので、昨今の発泡酒の増長ぶりには危機感が大きいのだ。ビールもどきだというのにスーパーの店頭ではすでにビールよりも大きな顔をしている。その上、麦芽を使わずにつくった発泡酒もどきまでが登場する始末で、一体ビールの将来はどうなってしまうのかと心配になる。販売量が減れば生産量が減り、コストアップが価格上昇につながるのが世の常。競争があるのですぐに値上がりするものではないだろうが、店頭での品揃えが徐々に減ってスーパードライ程度しか選べなくなってしまう、などというのは私にとって最悪のシナリオだ。
最近のビールのほとんどは、私にとってビールという名の発泡酒にすぎない。本格焼酎が見直されている昨今、本来のビールが見直され、ドライブームが過去のものになることを願ってやまない。