2004年03月11日

雑誌の疫病神〜「パソコン批評」休刊に寄せて

私はどうやら雑誌にとっては疫病神であるらしい。
私が毎号購入する雑誌の多くが休刊してしまうのだ。「The BASIC」「PC WAVE」「Super ASCII」ときて、今回は「パソコン批評」がその歴史を閉じた。もっともこの10年ほどで休廃刊となったパソコン雑誌はこんなものではないから、私が読むとなくなるというのは言い過ぎかもしれない。

そもそも、一口にパソコン雑誌といっても、パソコンの普及につれて多様化が進んでいる。中でも確立したジャンルといえばバイヤーズガイドだ。次々に出る新商品を比較テストしたり、いくつかの商品を長期間使ってレポートするロードテストなど、たしかに当該商品の購入を検討する際にはありがたい。しかし、年中新商品を買っているわけではないし、新商品自体が雑誌を毎号買って全体像を把握できる量ではなくなってしまった。
また、プログラミングやシステム管理に必要な情報が掲載された雑誌も多く、底堅い人気を持っているように見える。ネットワークやセキュリティなど、新たな技術情報やテクニックを必要とされる場面は多いだろうから、仕事で使う人にとっては必須に近いものなのだろう。とはいえ、WEB上の情報で十分、ということも考えられるので雑誌である必要性については疑問だ。
そして、最近特に目立つのはアダルト系も含む裏技紹介やアングラ情報(書店で堂々と売られているものなどアングラではないのだが)を扱うものだ。このあたりになると、パソコン雑誌ではなくアダルト向けのコーナーに並べるべきと思う。
私は以上のいずれもあまり熱心には読まない。最近ではあまり熱心にパソコンや周辺機器を買わないし、プログラミングの才能には恵まれていない。特にDVD-Videoのコピーの仕方だの、P2Pソフトでの違法音楽ファイルの集め方だのを載せた雑誌については買う買わない以前の問題として存在自体に腹が立つくらいだ(書店のコーナーをみていると、世の中の人は、高くても5,000円ほどのDVD-Videoのコピーにこれほど執着しているのかと驚かされる)。

私がパソコン雑誌を読むのは出張帰りなどの移動中がほとんどだ。結果として私が求めるのはパソコンやその周辺のテクノロジーに関する動向に関するニュース類と、これらをテーマとしたコラムなどの軽い読み物ということになる。技術情報にしてもその技術について知りたいのではなく、難しい技術が平易に解説されている文章自体に面白さを感じているのだ。上にあげたいくつかの雑誌名をみて、私のことをプログラマか技術者と思われる方もあるかもしれないが、決してそんなことはない。私自身は子供の頃にドリトル先生やキャプテン・ネモにあこがれていた、しかし文化系の人間にすぎない。だからこそ、技術系のコラムに惹かれるのじゃないかと思う。

この意味で、適度に技術情報をちりばめながらパソコン業界の問題を解説してくれた「パソコン批評」は貴重な存在だった。レビュー記事にしてもモノクロ印刷で図表も少ない分、文章の位置付けが大きい。必ずしもわかりやすい記事ばかりではなかったが、多くは楽しく読めたし、なにより持ち歩き安いサイズと厚みもよかった。これが休刊になってしまったため、目下私には毎号購入している雑誌はない。技術や新商品動向、パソコンやPDAなどの活用術等のコラムはたしかにWEBにあふれている。しかし私は紙の雑誌や本を電車で読むのが好きなのだ。
私が疫病神というよりも、文章量の多いコラムや解説記事が中心の雑誌はあまり売れない、ということなのだろう。それでも、どこか勇気ある出版社が、2時間かけてじっくりと読める雑誌をつくってくれないかと期待しているのである。

Posted by dmate at 2004年03月11日 23:11 | TrackBack
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